ライブストリーミング時代の到来

posted on 13 Jun 2020

もし台北の街中でYaとすれ違ったとしたら、一見典型的な若者の社会人に見えるだろう。しかし彼女はとても特別だ。Yaは1日をライブストリーミングアプリ17Mediaでファンに挨拶をする事から始める。夜になるとYaはいつもの静かな自分から、ライブ配信でオーディエンスと楽しくお喋りし交流する注目の若手ライバーに変身する。そしてわずか数分の間に数千人もの視聴者を彼女のライブ配信チャンネルに集めてしまうのだ。

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Yaは20歳でM17 Entertainment Group(以下、「M17」)の主要サービスであるライブストリーミングアプリ17 Media(日本では「17 Live」)のMost Popular Streamer of the Year (2017年)に選ばれた。

Yaは彼女の友人に17Mediaアプリを紹介された事をきっかけに、2016年の初めにライブ配信をスタートした。彼女はライブ配信での視聴者とのやり取りを楽しみ、すぐにフルタイム配信者に。モデルとしてのイベントやエキシビションの仕事の合間にさえ時間を見つければライブ配信を行うようになった。

「私はファンの方々とのやり取りを最も楽しめる方法は彼らと直接お喋りする事だと感じています」とYaは言う。「私は彼らとどんなことでも話しますし、本当の友達みたいに日々の生活を共有しています。」


まるで気持ちが通じ合っているかのように、YaのファンはYaの毎日の努力(歌ったり、お喋りしたり、彼らと一緒にオンラインゲームをすることも)に対し、バーチャルギフトを送る形で報いる。そのギフトはYaにとって収入源となり、より一層の情熱を注ぎ込む原動力になっている。

アーティストに力を与える

Yaのようにライブ配信プラットフォームに転じる人は年を追うごとに増えている。彼ら/彼女らはライブ配信をエンターテイメントの才能をより多くの視聴者に披露する手段としてだけでなく、彼らの情熱を支えてくれる生活の収入源として見ている。

日本でMaaamiはM17のトップライバーの一人だ。シングルマザーである彼女は少しでも生活の足しになる事を願って、2018年にライブ配信を始めた。Maamiはライブ配信する毎にフォロワーとエンゲージメントの統計を収集し、分析することですぐに視聴者の習慣や好みを学習。ほどなくして自分の長所を見つけ、音楽を演奏し、エンゲージメントを最大化するために「ゴールデンアワー」にファンと交流する事を始めた。

「長い時間ライブ配信をすればするほど、より成功のチャンスは高くなります。最初は興味が無いと思っていた人でさえ、継続的にライブ配信をしていれば興味を持ってくれるようになります」とMaaamiは言う。「一度12時間ぶっ続けで配信したこともあるんですよ。休憩ゼロです!」


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2019年、Maamiは日本で最も稼いだライブ配信者となり、ある時には66万個以上のバーチャルギフトを受け取った。しかしながら、財政的支援を超えて、彼女はライブ配信から精神的サポートも得ている。

「ライブ配信は私の人生を変えました。振り返ると、私はいつも一人で戦ってきました。でもライブ配信を始めてからファンの方々の中に私を理解してサポートしてくれる人がいる事に気付きました。私はそのような安心感を感じています。」とMaaamiは言う。「私はこれからもファンの方々を楽しませて、彼らと共に過ごしていきます。」


Xian Ziも仕事をオンラインに移した事で利益を得たM17のライバーの一人だ。彼はエンターテイメントや音楽イベントの司会者としての地位を確立していたが、オフラインの音楽、エンターテイメント業界が衰退していくと彼の収入はかなり苦しくなった。

ステージ上で司会をする機会が減ってきたため、Xian Ziはライブ配信を始めた。

フルタイムライブ配信者であるXian Ziは自身のコンテンツと配信を完全に、かつクリエイティブにコントロールしている。M17がアプリ上で提供する視聴者との双方向のライブのやり取りは、リアルタイムのフィードバックを与え、毎回より良いコンテンツを見つける為のアイディアを提供してくれると言う。

「過去には高額な製作費によってテレビ局が、視聴者ではなくスポンサーの意見に耳を傾ける傾向がありました。今のライブ配信とは、自由に視聴者とのやり取りをし、いつでもしたい時に出来る事を意味します。」とXian Ziは付け加える。


そしてM17の開発チームがこのビジネスを始めたのは、YaやMaaami、Xian Ziのような人々のためだ。

このライブ配信アプリは、台湾のオリジナルボーイバンドL.A.BoyzのJeffrey Huangによって始められた。Jeffreyはアーティストやクリエイティブを中心に数々のビジネスを生み出した連続起業家だ。彼は誰もが何らかの才能を持っていて、それを披露する機会が与えられるべきだと信じている。この信念が、アーティストに力を与え視聴者と彼らを繋ぐという狙いのもと、2015年に台湾でライブ配信の17Mediaアプリを生み出す結果をもたらした。

「アプリの名前の17は、北京語の発音である'Yi-qi'にちなんだもので、一緒にという意味もあります。」とJeffereyは言う。


最終的に17MediaはJeffereyが現在のM17のCEOであるJoseph Phuaに出会った時、M17となった。JeffereyとJosephの2人は起業家でもあり、モバイル技術に革命を起こしインタラクティブなソーシャルエコシステムを通じて世界を楽しませるという共通のビジョンを持っていた。

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巨大なマーケットポテンシャル

2015年にサービスが開始された時から、M17のライブ配信アプリは目覚ましいトラクションを獲得してきた。現在、M17は世界中に3千万人以上のユーザーを持ち、そのライブ配信者は毎日1万時間を超えるコンテンツを生み出す。しかも、その数は増え続けている。

M17は変化するメディア消費パターンの最前線に位置している。消費者の嗜好が予め設定された順番のプログラムを視聴していくスタイルから、個別の好みに合わせたものを好きなタイミングで視聴するオンデマンドスタイルに移行していく中、ライブ配信はその恩恵を受けている。より多くのインターネットユーザーが交流したり、エンターテイメントを見つけたり、即座に満足できるオンラインプラットフォームを探している。M17プラットフォームのような純粋なライブストリーミング業界は、2022年までに世界的に223億ドル以上の価値になると推定されている。

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2020年が多くの企業にとって困難な年となっている一方で、M17はむしろ発展を遂げた。

当面の間、ソーシャルディスタンスは外せないものとなり、何週間も室内で過ごす事に慣れてきた人々はライブ配信のようなソーシャルプラットホームでより長い時間を過ごすようになるだろう。このデジタルなやり取りはアーティストと(疑似的なものだとしても)社会生活に飢えている視聴者の両方にとってライフラインとなっている。新型コロナウイルスの感染拡大が始まってからのこの数か月、オンラインメディア業界は既に著しいユーザー増加を見せている。

M17では、2020年第1四半期に登録されたデータが業界のトレンドを裏付けている。アクティブなライブ配信者の数は毎月15%増加しており、新規の課金ユーザーにいたってはより顕著に毎月23.3%も増加している。加えて、ストリートアーティストやプロのミュージシャンを含む、現在の環境では屋外でのパフォーマンスが難しいと考える従来のオフラインパフォーマー等で、ライブ配信者になる事に興味を持つ人の数が増えているという。

「視聴者とアーティスト両方からライブ配信に対する興味が急増している。台湾ではM17のすべてのオフラインイベントが中止となったが、私たちのチームはオンラインでの芸術教育や公共ヘルスケアプログラムを立ち上げ、プラットフォームにより多くの人を乗せることに成功しました。新規にライブ配信を始めることに興味を持つ方が30%増え、新規の課金ユーザーが2倍になるなど、その反応に大きく励まされています。」とJosephは言う。

一方日本では、ロックバンドのコンサートや格闘技、クラシックミュージックコンサートのような新しい企画をプラットフォームに加えるなど、M17チームは幅広い分野のコンテンツを取り入れる事に成功した。これらの企画をライブ配信するという技術的挑戦を与えられた事は、チームにとって難しい課題だった。しかし、3月の課金ユーザー数が過去最高を記録し、視聴者からのポジティブなフィードバックがM17の努力に報いる形となった。

新たな成長のステージへ

今日、M17は間違いなくアジアを代表するライブエンターテイメントテクノロジー企業の1つだ。特に、17 Liveとして展開する日本では、最大のビデオライブ配信企業であり、60%以上のマーケットシェアを誇る。これは2017年8月、たった250人程度のライバーしか在籍していなかった創業当時からは想像もつかなかった状況だ。

1年のオペレーションの後、M17アプリはそのアグレッシブなスタイルで3,900人以上のアーティストと契約し、日本を代表するライブ配信プラットフォームとなった。何がライブ配信者と視聴者をプラットフォームにそこまで引き付ける要因となったのだろう。

M17は質の高いコンテンツとライブ配信者に対する最高の付加価値を与える事で自分たち自身の差別化を図りながら、アーティストを後押しし、グローバルなライブエンターテイメントプラットフォームであり続けるというビジョンを守っている。

同社は包括的なend-to-endのライブ配信者マネジメントモデルを導入した最初のライブストリーミングプレイヤーだ。自社でタレント育成機能と芸能事務所機能を有し、すべてのM17ライブ配信者は契約アーティストとしてライブ配信でアーティストとしての才能を発揮するための社内トレーニングを受けなければならない。

また、ライブ配信者にコンスタントなサポートを与え、魅力的で双方向的な、質の高いコンテンツを制作するアシストを行う現地チームを持つ。このアプローチがうまく機能し、M17のアプリは2016年に台湾のライブ配信業界の8位からスタートしたが、1年の間にマーケットリーダーとなった。

M17が競争の激しい日本市場に参入する事を決めた時、彼らは時間をかけて学んできたアーティストマネジメントやマーケティングのノウハウを活用した。日本人のライブ配信アーティストと直接的な関係を築くことに加えて、日本独自の文化やコンテンツの好みを考慮しながら、戦略的サポートや現地のリソースを提供してくれる現地パートナーとの強力なネットワークを構築した。これら全てがM17アプリを日本のライブストリーミングのリーダーとしての地位に押し上げる助けとなった。

なによりもM17の鍵となる点は、先手を打ち、急速に変化するデジタルコンテンツ消費のトレンドを掴む能力にある。これはユーザーエンゲージメントを最適化し、プラットフォームにおけるユーザー体験をさらに向上させる為の詳細な分析機能を開発する努力によるもので、継続的に追及してきた事だ。

今後の展望

M17はより多くの世界中のアーティストの力になり、質の高いコンテンツをより幅広い視聴者に届けたいと考えている。次のレベルの成長の入り口に立っており、その成長は既に始まっている。

M17は面白い新しい企画を創るために従来型のメディア企業の制作チームと先進的なコラボレーションを実施するなど、コンテンツの多様性を強化するための新たなアイディアを探求し続けている。また、北米や中東のような重要な海外マーケットを拡大しつつ、日本やアジア先進諸国でのプレゼンスを高める事に注力している。

外向けの展開努力とは別に、M17はユーザーにワン・ストップのライブソーシャルプラットファームを提供するために、グループ内でのシナジーが見込めるビジネスも拡大している。

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一つの例として、ソーシャルコマース機能を台湾と日本でライブ配信と統合した。テクノロジーに支えられたこのライブコマ―スとのソーシャルメディア間の融合によって、ライブ配信プラットフォームでのエンゲージメントとマネタイズをさらに進め、新しい経済トレンドを生み出すことへ繋げられるだろう。

テクノロジー面では、M17のエンジニアリングチームは他社に追いつかれないように常に技術革新を行い、プラットフォームの急速な成長にインフラがついていけるようにしている。例えば、AIシステムを用いたライブ配信者と視聴者の分析だ。この分析はクオリティ維持やユーザーの主要なエンゲージメント機能の識別に役立てられている。

M17 Group全体を見渡して見出せる成長機会やマーケットからの継続的な支持を受け、M17は成長を加速させるために追加資本を求めることを決定した。

Vertex Growthがイチナナに見出した未来とは

M17はVertexのポートフォリオエコシステムの一員であった。これまでM17の動向を注視して来た為、Vertex GrowthはM17の資金調達に携わるのに適切なポジションにいた。2019年後半に同社が追加資本に興味を示した時、私たちは即座にデューデリジェンスを開始するために連絡を取り、結果的に投資ラウンドを主導した。

「これはVertex Growth Fundにとって、証明済みのビジネスモデルを有する確かなマーケットリーダーにジョインする絶好の機会でした。M17は大いなる成長の余地があり、私たちの姉妹ファンドが行った素晴らしい仕事を引き継げる事を誇りに思います」とVertex Growthのマネジング・ディレクターのTam Hock Chuanは言う。


私たちはM17がプラットフォームを拡大し続け、成長し続けるグローバルユーザベースに向けて質の高いライブエンターテイメントと双方向型のソーシャルエンゲージメントを提供し続ける事に自信を持っている。M17はライブストリーミングにおけるコアコンピタンスを証明し、更なる成長の機会を発見しカバーするために社内での革新を行っている。またシナジーの見込めるビジネスを通してリーチを広げ、最終的にユーザーエンゲージメントを最適化しマネタイズを向上させるオンラインインタラクションの好循環を創る事を目指している。

何よりも重要なことは、過去の困難な時期にグループを導き、かつてないほど力強くなったM17の非常に有能な経営陣を信じているということだ。事業目標を達成してきた確かな実績が語るように、JosephとM17チームは会社をより高いレベルに引き上げることができると確信している。

Vertex GrowthはM17を私たちのファミリーとして歓迎し、成長の次のステージを共に歩めることを楽しみにしている。


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