15 Feb 2023

Chua Kee Lock, CEO Vertex Holdings

2023年のベンチャーキャピタルの展望

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IT産業では、資金調達市場の逼迫が起こるなか、市場への適応が迫られています。このような難局に耐え、幾度もの好不況のサイクルを乗り切ることができる永続的なベンチャーキャピタル(VC)となるために何が必要かを考えてみました。

教訓1:市場は循環するものである – いずれは上昇するものと考える....

今回の投資環境の悪化は、2000年や2008年の過去の市場サイクルと同様です。投資環境が軟調になる以前は、テクノロジーセクターのFOMO(Fear Of Missing Out、「取り残されることへの恐怖」)投資が盛んでした。このFOMO症候群は、ドットコムバブル時代に、アマゾン、フェイスブック、YouTubeなど今日のハイテク企業の誕生の好機に乗り遅れた人たちによく見られました。2020年と2021年の大半は、DeepTech、人工知能(AI)、Software as a Service(SaaS)などのセクターで、歴史的にみても、高いバリュエーションで膨大な資金を調達する企業が続出しました。

教訓2:逃す喜び(JOMO)のうま味

2021年後半の株式市場低迷が未上場市場にも波及し、2022年にはウクライナとロシアの紛争でさらに悪化しました。世界経済がパンデミック後の世界への適応に苦慮し、サプライチェーンの途絶、半導体チップの不足、インフレによるコスト上昇圧力が続くなか、市場の不確実性はさらに高まりました。このような状況下において、民間投資家はより慎重に投資するようになり、投資家心理は「FOMO」から「JOMO」(Joy of Missing Out)へと変化しています。

過去最高水準のドライパウダーが話題になっている一方で、一部のベンチャーキャピタルは過剰投資をしている可能性があります。この状況においてドライパウダーの多くは既存のポートフォリオ企業に投入されると想定されます。長期的なパフォーマンスの懸念としては、不況時に優良企業を支援することよりも、うまくいってない投資の手当てを必要以上に優先してしまうことです。このような環境下では、スタートアップ企業の魅力的なバリュエーションを取り込み、良い経営者を見極めるべきだと考えます。市況が好転したときに、こうした企業は通常良いパフォーマンスをあげ、結果として傑出したファンドパフォーマンスをあげるヴィンテージになることが予想されます。

 この経済の低迷はいつまで続くのでしょうか?それは誰にも分かりません。しかし私は、過去の傾向から、市場が回復し投資家の信頼が回復し始めるまで、今後12〜18ヶ月間続くと予想しています。

教訓3:スタートアップは基本に忠実に

良い時も悪い時も、良いスタートアップ企業は現れるものです。暗い市場の見通しやバリュエーションへの悪影響にもかかわらず、たくましい起業家が現れ、この先の嵐を乗り越えていくことでしょう。この市況に耐えるためにもスタートアップは、独自のポジショニング、テクノロジー、ビジネスモデル、競争優位性などの基本的な重要事項に立ち返ることが求められます。

これらの重要事項だけでなく、不況を乗り切るためには、資金調達や収益への明確な道筋も重要です。強力で持続可能な業績を示すことで、投資家はその企業への投資をより積極的に行うようになるでしょう。この局面において、強力なリーダーシップと実行力が、次の成長ステージを支えるためのたくましく有能な人材を育成するためにも重要になるでしょう。

教訓4:不況下でこそチャンスを狙う

チャーチルはかつて、"Never let a good crisis go to waste"(良い危機を無駄にするな)と言いました。

歴史上、経済低迷期に積極的に投資したVCファンドは、優れたヴィンテージになり、より良いパフォーマンスを発揮してきましたが、これは今日我々が目の当たりにしている状況と同様であると言えます。東南アジアの若手ベンチャーキャピタリストは、初めての不況を経験しているかもしれませんが、今後数年間で積極的に投資を行うVCファンドは、この先、トップファンドの仲間入りをする可能性が高いと私は考えています。

 

投資の道を切り開

今後市場が調整し正常化されることで、VCには適正なバリュエーションで投資する機会が増えていきます。これまでの市場サイクルと同様、強力な創業チーム、差別化された製品やビジネスモデルを持つ企業が、次のグローバル・チャンピオンとして台頭し、成功すると信じています。

このような厳しい状況のなか、Vertex Ventures Southeast Asia & India では、依然として東南アジア・インド地域での投資ペースを維持していきます。私たちは、新しい原石を発掘するために、大胆かつ規律的な投資活動に専念することを約束します。

「早撃ち」投資(この場合は資本の投入)する無謀な投資家とは異なり、優れたVC投資は、スナイパーのように堅実で忍耐強い射撃術に長けていると信じています。経験豊富で計算された狙撃手は、風向きを読み、ターゲットとなる機会を待ち、革新的な投資インパクトをもたらすのです。

 
私たちは、VCを運営するグローバルネットワークとして、良い時も悪い時も、魅力的な投資先企業を支援する戦略的パートナーとなることを目指します。

どんな困難があろうとも、この思いを忘れることはありません。

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Watch the interview with Chua Kee Lock:


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